雑記#1(猟犬について考察)

雑記


一犬、二足、三鉄砲

今回は私が非常に興味を持っている狩猟でのパートナー「猟犬」について考察していきます。なぜ猟犬に興味があるのか?それは....犬が好きだからです!だから非常に興味があります。

よく聞く格言に『一犬、二足、三鉄砲』というのがあるかと思います。私自身は猟隊の方から直接この格言を聞いたことはありませんが…。書籍やネット上でよく書かれていますよね。私がお世話になっている銃砲店の方からも「猟犬がいないと猟は難しいよ」と言われたことがありますし、猟隊長からも「犬がいたほうが効率よく猟ができる」というような話を聞いたことがあります。猟隊長は猟犬を飼っているので特に言葉に重みがあります。

今シーズン私が参加した狩猟はすべて「巻き狩り」でしたが、たしかに猟犬が鹿を起こして、追ってきてくれるので運動量から言えば、忍び猟よりも効率はいいと思います(犬なし忍び猟をやったことがないのでおそらくです)。

昨今、猟師不足や猟師の高齢化が叫ばれており狩猟界に危機感が漂っておりますが、猟師以上にその数が減少していくのが ”猟犬” ではないかと考えています。これから狩猟をやり始める方々が猟犬を飼って「巻き狩り」をやっていくのはハードルが高いと思います。田舎の方に住んでおり、山も身近にある。そういう方なら猟犬を飼うのには問題ないかと思いますが、都心回帰が始まっている日本において、都会で猟犬を飼うのは非常に難しいのでは。

日本(海外においても)古来から狩猟のパートナーであった ”猟犬” 。特にグループ猟にはなくてはならない存在ですが、ある意味猟師以上に絶滅危機に瀕していると思われる(あくまで勝手な考察です)”猟犬”に今回はスポットを当ててみたいと思います。

猟犬の種類

猟犬と一言で言っても、調べてみると世界にはものすごい数の猟犬がいます。もともと犬はペットとしてではなく、様々な仕事を請け負っていたことがよくわかります。まさにパートナーですね。一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)に登録されている犬種は約200種類。JKCが所属している国際畜犬連盟(FCI)では犬種を用途や生存目的によって10グループに分類しておりますが、このうち猟犬のグループは7グループにも及びます。つまり世界中にいる犬のほとんどが、その起源は猟犬だったということが言えると思います。人間の生活に無くてなならない存在、だからこそここまで犬種が増えたのでしょう。

猟犬はFCIでは7グループに分類されていますが、日本での猟犬の役割から大きく分けると

猟犬の分類
1.セント・ハウンド:嗅覚を頼りに獲物を捜す
2.サイト・ハウンド:視覚を頼りに獲物を捜す
3.鳥猟犬:鳥類を対象に狩猟の手伝いをする

かなりざっくり分類しましたが、このような感じだと思います。もちろん世界には他にもネズミなどの小動物を対象としたテリアや日本では愛玩犬としてすっかりお馴染みとなっている対アナグマ用に改良されたダックスフンドなどもいます。ただし、日本においてはそのような狩猟は行われていないと思われるので、今回は割愛させていただきます。

嗅覚が最大の武器。セント・ハウンド

セント・ハウンドは鋭い”嗅覚” を武器に獲物を追跡し、追い詰めます。日本の狩猟でも獸猟犬の中心がこのセント・ハウンドだと思います。有名どころではビーグルやブラッドハウンドが属しています。見た目はthe洋犬といった感じの犬種が多く、短毛で垂れ耳、しわが多くがっちりした体型をしているのが特徴です。武器は長時間獲物を追跡できるスタミナとやはり鋭い嗅覚で、一説によると犬の嗅覚は人間の100万倍以上とされており、主に”嗅ぎ分ける” 能力が非常に高いのが特徴です。

  • ジャーマンシェパード:人間の約100万倍
  • ビーグル:人間の約300万倍
  • ブラッドハウンド:人間の約500万倍

と言われています。500万倍はすごいですね。ただし、あまり遠くに離れると嗅覚も低下するらしく、地面に鼻をつけて臭いを嗅ぎながら追跡するのはこのためらしいです。100万倍以上というのはまったく想像がつきませんが、人間が視覚からかなりの情報を得ているように(顔の表情から喜怒哀楽を、体型から筋力や俊敏性、強さなど)猟犬も臭いから獲物の情報(雌雄や大きさ、頭数など)を得ている可能性が考えられますね。

視覚で獲物をロックオン。サイト・ハウンド

 

お次はサイト・ハウンドです。サイト・ハウンドは”視覚” を武器に獲物を追い詰めます。日本の狩猟界では純粋なサイト・ハウンドは用いられていないかと思います。代表的な犬種としては、アイリッシュウルフハウンドやグレーハウンドなどが属しています。犬が視覚を武器にというと何か違和感がありますよね。なぜなら犬は視覚があまり発達しておらず、100mも離れると人間の区別が出来ないとされていることや、近眼で色盲(夜間は人間よりも視る能力は優れている)と言われているためです。

サイト・ハウンドの体型は脚が長く、引き締まった体、長細い顔が特徴です。このような体型から脚が速いのが容易に想像できます。日本では主に森の中(山)で狩猟を行うのに対し、海外では草原などでも狩猟が行われることから目で追うというよりも、そのスピードが重宝されたのではないかと考えられます。

役割はいろいろ。鳥猟犬

鳥猟犬の役割は多岐にわたります。たとえば、獲物を見つけたり、追い立てたり、さらには猟銃で撃ち落とした獲物をやぶや水の中に回収に行く、などなど。今では盲導犬などですっかりおなじみのラブラドール・レトリバーやセッターなどが属しています。ちなみにラブラドール・レトリバーのレトリバーは「レトリーブretrieve」から来ており、回収する、取り戻すという意味で文字通り獲物を回収する犬ということです。

ここ日本においては、カモなどを池などから回収するというよりも、キジを藪の中から追い出したり、ここにいるとポイントしてくれたりという形で人と一緒に狩猟をしていると思われます。人が藪の中に入らなくても犬が鳥を追い出して、散弾銃で人が仕留める。まさにパートナーですね。私自身犬を用いた鳥猟は見たことはありませんが、いつかこのコンビネーションを見てみたいと思います。

猟犬の実際と未来

これまでかなりざっくりと猟犬についてまとめました。最後は狩猟における猟犬の実際(あくまで私が所属している猟隊でのことです)と未来について考察していきたいと思います。

私が所属している猟隊には猟犬が全部で8頭います。2グループで「巻き狩り」をしており、私が所属するグループに5頭、もう一方のグループに3頭という内訳です。犬種は様々で、純血種ではなくmixです。例えば、紀州犬とビーグルのmixとかプロットハウンドと熊野の地犬のmix、紀州犬と四国犬のmixなどです。個性豊かな犬達です。

猟犬の飼い主の方にいろいろ聞いたところ、あまり純血種にはこだわりはないようで、自分がどのような形の狩猟をやるかで犬を選ぶそうです。紀州犬とビーグルのmixに期待した能力は紀州犬などの和犬が持つ帰巣本能(海外の犬は鹿を追ってどこまでも走る犬が多いと言っていました)とビーグルの嗅覚らしいです。もちろん純血種にこだわっている猟師の方々も多いと思いますが、印象的には「F1」と言われている1代のみのmixを作ることが多いのかな~と感じます(徳島の猟師の方もそうでした)。実際に期待する能力を宿しているか否かは猟場での結果からしか判断はできないと思いますが、猟犬の実際の1つかと思います。

そして猟犬の未来ですが、決して明るいものではないと思われます。古来より人間の狩猟におけるパートナーとして、貴重なたんぱく質をもたらしてくれていた猟犬たちですが、社会事情が大きく変わり過ぎました。肉は狩猟をやらなくても食べれるようになり、狩猟自体が下火になりつつある現在、猟犬を飼う必要が無くなってきているのが事実です。私が所属している猟隊や「巻き狩り」を一緒に行っているグループの方々も猟犬を飼うことを考えている人は ”0” です!興味をもっているのも私ぐらいでしょう…。以前猟隊長に猟犬がいなくなったら今のグループ猟ができなくなる可能性ありますよね?と質問したことがあります。猟隊長は「そうだよ~」と笑って答えていました。やはり、猟師の育成とともに猟犬を絶やさぬようにすることも狩猟文化を守るという意味では大事かと思います。

猟期はすでに終わっていますがネットで猟犬を調べていると、この時期になると猟犬が保護されることが多いという記事を見ました。獲物を追いすぎて主人とはぐれてしまう事もあると思います。しかしそれ以上に問題なのが、猟師が使えない犬を山に置き去りにすることがあるらしいです。これは許せません!たしかに私が見ているブログでも猟師の方に犬を渡して「犬が行かない、鳴かない」などの理由で返却や交換を求めてくる人もいると書かれていました。どうなんでしょうね。この考え方は…

私に猟犬の事を教えてくれた方は、子犬のうちから山を一緒に歩くことが大事だよとそうすれば猟欲も出てそして先輩猟犬と一緒に組ませればちゃんと猟犬になるとおっしゃっていました。すべての犬が猟犬の資質があるわけではないと思いますし、個体差ももちろんあると思いますが、この考え非常に好感が持てました。

記念すべき雑記#1は猟犬について考察してみました。非常に奥が深く、またさらに興味がわいてしまいました。そんな猟犬…猟師とともに絶滅していく運命にあるのか否かはまだわかりません。でもいつか飼ってみたい、相棒として一緒に狩猟をしてみたい、今回いろいろ調べてみてあらためてそう思います。そして猟犬の未来の鍵を握っているのも人間なんだと考えさせられました。