雑記#14 猟期前学習(ジビエの安全性に迫る!)

雑記


こんにちはBorkです。今回は猟期前学習第二弾!ということで、ジビエの安全性に迫りたいと思います。狩猟の醍醐味の一つに「自分で仕留めた獲物を食べる」というのがあると思います。私も狩猟を始めた動機がまさにそうでした。残念ながら昨シーズンは個人の猟果としては“0”でした…はい。今シーズンこそはその目的を達成させたいと思っています。

しかし、実際仕留めた獲物の肉を美味しくまた安全に食す知識が不足している事に最近気づきました… 私が持つ野生鳥獣肉へのイメージとしては養殖の生き物の肉よりも健康的で美味しいのでは?ですね。まあ野生鳥獣の肉は、養殖で育てられた鳥獣の肉よりも美味しく健康的だと人は思ってしまうものですよね(鹿や猪は養殖されていないため比較は困難ですが)。

美味しく健康的というのは確かにそうかもしれませんが、安全性に関しては病気などを管理されている養殖の生き物の方に分があるでしょう。自然界には以前アップした「マダニ」などの害虫もいますし。だからこそ正しい知識を持ち、責任を持って仕留めた獲物を美味しくいただきたいと思います。狩猟時の外傷や事故だけでなく、食事の方のリスク管理も同様に大切なことです。

ということで、またまた少し硬い内容になるかもしれませんが最後までよろしくお願いいたします。

マダニについての記事はこちら☞

雑記#9 死を運ぶ害虫“マダニ”から身を守る!

ジビエの歴史
この“ジビエ”という言葉、ご存知の方も多いと思いますが、フランス語です。中世のヨーロッパでは大型獣の狩猟は、広大な領地を持つ階級の人々、つまり貴族の嗜みだったようですね。主に客人をもてなすときの料理として振舞われたそうです。

貴族が食べるくらいですので、その調理方法は工夫をこらしワインやスパイスを用いて食べるようになり、これが現代に伝わる“ジビエ料理”となったと言われています。

では我が日本においてはどうだったのでしょうか?もちろん、日本においても古来から野生動物を食す習慣はあったようです。有名どころですと、織田信長や徳川家康は鷹狩りで仕留めたキジを食べていたと言われています。また、山間部の猟師などもクマやイノシシなどを食していましたが、これらの料理は長らく地域伝統料理とされていたのだと思います。

そして最近にわかにジビエブーム?が日本でも起きつつある感じですね。ニュースでも以前より目にするようになりました。猟師不足が叫ばれ、また有害鳥獣駆除で駆除される鹿や猪を少しでも利用しようという流れが出来つつあるのだと思います。非常にいいことですね。

ジビエの栄養価は?
ここで私が狩猟対象としている鹿や猪の肉にどれだけの栄養があるのか?豚や牛と比較してみたいと思います。一般的によく報告されている例を紹介させていただきます。まず猪肉ですが、これは鉄分が同じ系統の豚肉と比較し約4倍で、ビタミンB12が3倍とされています。同様に鹿肉も栄養価が高く(鹿は豚のような同じ系統の養殖獸がいないため牛と比較)、カロリーは牛の約半分、脂質は5分の1!、鉄分は1.7倍とされています。この差はすごいですね〜。さらに鹿肉には「アセチルカルニチン」が牛肉の約2倍含まれているらしいです。この「アセチルカルニチン」ですが、動物の体内で生成されるため必須アミノ酸ではないのですが、脳に作用し神経伝達物質の一種であるアセチルコリン量を増やし脳機能の向上や疲労・ストレス軽減などの効果が報告されていることから注目されています。

鹿肉などは低脂肪、高タンパクであるためアスリートなどやダイエット中の方に適した食材と言えますね。素晴らしい。

出典:文部科学省[日本食品標準成分表2015]

狩猟肉の安全性について(これまでの報告から)

ここからは狩猟肉の安全性についてです。鹿肉や猪肉は豚や牛を超える高い栄養価を誇ることがわかりました。しかし、こと安全性については管理下で育つ養殖の豚や牛には到底かないません。だからこそ直接仕留めた獲物に触れ、食す機会が多いハンターは鹿肉や猪肉の安全性について知っておかないといけない事だと思います。

私が収量しえたこれまでの報告では野生猪肉摂食後にE型肝炎を発症した例が多いのかと思います。以下に代表的な報告として我が愛知県での発症例を紹介します。

報告1
清水らは猪肉の摂食が原因でE型肝炎を発症したと思われた4症例について報告しており、4例とも発症時期は2月に集中しており、潜伏期間は摂食後から最長で約60日、平均30〜40日間であった。4症例のうち1症例は猪肉を生焼けの状態で食し、加熱が不十分であることが考えられるが、他の3症例はいわゆる「しし鍋」として充分に煮込んだ状態で食していたと思われる、にも関わらずE型肝炎を発症していた。
報告2
中根らは2010年4月から2014年11月までに愛知県内で捕獲され、市内処理施設で処理された猪439頭および鹿185頭から採取された肝臓を対象にHEV-RNAの抽出調査を行った。その結果、猪439頭のうち49頭の肝臓からHEV遺伝子が検出された。鹿185頭においてはHEV遺伝子検出はすべて陰性であった。
ジビエを安全に楽しむためには
上記の報告を読むと、E型肝炎への感染などジビエに潜む危険性にはやはり注意が必要ですね。しかし、自分で仕留めた獲物は自分で解体し責任を持って食したいものです。個人的な見解ですが、それがハンターの一つの責務かとも思いますね。あくまで個人的な見解です。

ではどうすればいいのか?ここは厚生労働省が平成26年に発表した野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン) を参考にするのが一番いいと思います。私もこちらからダウンロードして読みました。参考にしたいと思います。その他にもカラーアトラス も発表されています。こちらは仕留めた獲物を廃棄するべきか否かや解体時の肉のチェックにとても役に立つかと思います。もちろんダウンロードしました。

ガイドラインにはジビエを消費する際には肉の中心部が摂氏75度で1分間以上又はこれと同等以上の効力を有する方法により、充分加熱して喫食することを推奨していますが、前述した報告では充分加熱処理したと思われる「しし鍋」を食した人も感染しています...どうすればいいのか?もちろん生煮え状態で肉を食している可能性もありますし、その他には素手で生肉を触り、その手で口に触れてしまったとかも考えられますね。この辺りも解体時に注意しないといけません。HEVは63℃で30分間と同等以上の熱処理で感染性を失うため、やはりしっかりと加熱処理することが基本になると思います。

まとめ
今後もし鹿や猪を仕留めることができたなら、以下の事に注意したいと思います。

  1. 解体時に経口感染しないように、野生鳥獣肉などを触れた手で口などを触れないように充分に注意すること。
  2. 仕留めた獲物を廃棄するべきか否かはカラーアトラスを参考にして判断する
  3. 調理する際は、肉の中心部までしっかりと熱を加える(75℃以上で1分間以上加熱処理)。

といったところでしょうか?あとは人にあげるのも注意したほうがよいですね。しっかりと加熱処理することを伝えるべきでしょう。他には飼い犬にも野生鳥獣の生肉は与えない方がいいでしょうね。犬はもう生肉を主食としている“狼”とは違いますからね。

まだ今シーズンが始まっていないので、所詮は「取らぬ狸の皮算用」ですがw。もし今シーズン獲物を仕留めることが出来たなら、解体時から注意してジビエ料理を楽しんでいければと思います。それではまた。